Reise zum Anfang der Zeit - japanisch - page 6

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見た場合、本来的な意味で美しいが、しかし例えば建築と組み合わせた場合、
精神的なものを人間に仲立ちするような物語的要素に欠け、それが現代建築全
般にみられる居心地の悪さの原因になっている。
物質とエネルギーは、何も手を加えなければ、エントロピーの定理に従って常に
秩序ある状態から無秩序な状態へと変化する。従って秩序ある状態を維持する
ため、あるいはよりレベルの高い秩序ある状態をもたらすためには、手を加える
必要がある。社会のエントロピーと美との類比を試みよう。美の法則性に対応す
る視覚体系の状態は、存在し得る全ての視覚の状態の中でもかなり秩序ある状
態であるというのが、証明すべきテーゼである。つまり、この状態を維持するため
には常に手を加えてゆく必要がある。逆に手が加えられなければ、エントピー、
つまりここでは美的体系の「無秩序」は増加を続けることになる。世界は時間経
過とともに究極の無秩序状態に向かおうとするであろう。しかし従来のエントロ
ピー理論では外部からのエネルギー供給は考慮されたが、たとえば自らを組織
化してゆくプロセスは考慮されてこなかった。[9]
社会に目を向けた私のエントロピー定義は、微粒子(ここでは人間)が自らの組織
化を強めてゆく状態にある、という観察から出発している。共同体の形成、法体
系の構築、学校教育や高齢者への保障にこれははっきり表れている。美的状態
を維持するために手を加えるのは、こうした状態から何らかの利益を得る者のみ
であろう。現代であれば広告デザイナーやプロダクトデザイナーがそれである。
[10]彼らが私達に提供する豊富な形は、少なくともその一部は芸術に限りなく近
いところまで来ている。こうした人たちがいなければ、私たちを取り巻く形や色の
世界は消えてしまうであろう、ちょうど私達から失われつつある静寂の世界と同様
に。
私達は発展の途上で、良きものとそうでないものを無意識のうちに識別する能力
11 -
裁判官,
F 042
12 -
踊るヴィーナス,
F 109
13
-
パレスチナの羊飼い,
FP 038
14 -国境の子供たち,FP 066
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